将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2009年12月10日 (木)

竜王戦を4連勝で防衛した渡辺明竜王の1局単価は1000万円

今年の竜王戦7番勝負(渡辺明竜王―森内俊之九段)は、渡辺が4連勝して竜王6連覇を達成しました。1局1局はいずれも熱戦でしたが、渡辺は勝負の運が乗り移っているような見事な勝ちっぷりでした。

渡辺は羽生善治名人との昨年の竜王戦で、3連敗から4連勝して奇跡的な防衛を果たしました。それを合わせると、竜王戦で8連勝したことになります。しかも相手は十八世(森内)に十九世(羽生)と、永世名人の資格者です。なお7番勝負のタイトル戦では、1997年の谷川浩司竜王以来の記録(96年に羽生に4勝1敗、97年に真田圭一六段に4勝)。

渡辺は竜王防衛によって、賞金(3900万円)と対局料(750万円)を合わせて4650万円を獲得しました。これは1局単価で約1000万円、2日制の対局なので1日あたり約600万円。会社員の平均年収を1日で稼いだことになります。

ちなみに渡辺は2年前、コンピュータ最強将棋ソフト『ボナンザ』と平手の手合いで指して大きな話題になりました。その対局料は「負けると竜王の名誉に影響する」との理由から、前記の1局単価ほどの金額だったそうです。

竜王戦7番勝負が最短の4局で終わり、少し複雑な立場が主催者(読売新聞社)側です。昨年は羽生が勝つと「永世七冠」になるうえに、第7局までもつれ込んだので、棋界内外で大いに盛り上がりました。対局場には取材陣が殺到し、ネット中継へのアクセスも膨大に増えました。しかし今年は竜王決着の第4局でも、記者室は閑散としていたそうです。

第5局以降の対局場のホテル・旅館も、受け入れ態勢を万全に整えていましたが、7番勝負が終わってはそれも水の泡です。なお最初からの取り決めで、キャンセル料は発生しません。その代わり主催者側は、次期以降に早めの対局に振り当てるなどの配慮をするそうです。

将棋愛好家の作家・本岡類の推理小説『奥羽路 七冠王の殺人』は、タイトル戦の対局場で殺人事件が起きて七冠王の棋士に嫌疑がかかるという筋立てです。それには第5局の対局場の関係者が、何としても対局を実現させたいために仕組んだ背景がありました。もちろんフィクションですが、対局場側が対局を強く待ち望む気持ちは同じです。

第7局の対局は確率的に少なくても、実現したら大いに盛り上がります。1995年の王将戦第7局は3月に厳寒の青森県・十和田湖畔で行われましたが、羽生の七冠達成の話題で注目を呼びました。各地から対局場に300人の将棋ファンが訪れ、取材陣は50社200人に上りました。

次回は、竜王戦の成り立ちについて。

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コメント

米長会長が以前、まずボナンザ戦の相手として佐藤棋聖(当時)にお願いしたところ「例え2億円もらっても受けません」と断られたとテレビで話されていました。
渡辺竜王も同様に「嫌です」と難色を示したけれども最終的に引き受けた・・・
佐藤さんにしろ渡辺さんにしろ、ここまでくると最早お金よりもトッププロとしてのプライドの問題なんですね。

投稿: popoo | 2009年12月10日 (木) 12時34分

初めまして。ブログ拝見させていただいております。やはり田丸先生と言えば、棋王戦の挑戦者決定戦で大山名人に敗れ、それが結果的に名人の最後のタイトル戦になったことが記憶に浮かびます。当時、66才にもなる永世名人を前にして、田丸先生はどのような気持ちで対局に臨まれたのか、聴かせていただきたく思います。

投稿: ケイ | 2009年12月13日 (日) 23時05分

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