将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2009年10月19日 (月)

石橋幸緒女流王位がタイトル戦で角による豪快な「反則手」で勝局がふいになる

今月14日に行われた第20期女流王位戦五番勝負(石橋幸緒女流王位―清水市代女流二冠)第4局で珍事が起きた。石橋が終盤の局面で、六段目の角を四段目の自分の歩を飛び越えて敵陣の二段目に成り込む反則手(▲6六角→▲2二角成)によって、勝局がふいになったのだ。

斜めに進む角の動きはじつに豪快で、▲2二角成が実現すれば相手玉はぴったり詰みとなる。石橋は5手前から読んでいて、自信たっぷりに指した。反則を指摘されても、何をしたのかすぐ理解できなかったという。反則手を指した瞬間だけ、四段目の歩は消えて見えたのだろうか…。なお、その局面では石橋は持ち時間が十分にあり、いったん受けに回れば必勝形だった。

プロ棋士といえども、ごく稀に反則を犯す。最も多いのは、同じ縦の筋に自分の歩がいるのに、持ち駒の歩を打つ「二歩」。あの大山康晴十五世名人でも犯した。私も修業時代に二歩を打ったが、二段差だったので笑われた。自陣の下側にある歩をうっかりして、敵陣に歩を打つケースが多く、至近距離の二歩はめったにない。

そのほかに、駒の動き方を間違える、相手の王手に気づかないで玉を取られる、相手の手番なのに2手続けて指す、などの反則例がある。どのケースでも、石橋と同じように、反則手ほど好手が多い。まさに、綺麗な花には棘があるのだ。また、何手も先を深く読んでいるうちに、誤って予定外の手を指して反則という、プロならではの例もある。

この対局後、新聞やテレビで反則手の話題が報道され、石橋は急に注目された。ある新聞では、20歳の井山裕太囲碁新名人誕生の記事より、石橋の反則記事のほうが大きかった。石橋には気の毒だったが、将棋の話題を全国的に広めた効果が生じた。

女流王位戦はこれで1勝1敗となり、第3局は今週の21日に福岡県で行われる。私はその対局の立会人を務める。対局の模様や石橋の様子は、来週のブログでお伝えする。

今回は、予定を変更して反則手をテーマにした。次回は、別の形の反則負けについて。

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