「と金ドリーム」が叶う竜王戦は優勝賞金が3900万円
将棋界の最高棋戦である「竜王戦」は高額の賞金で知られる。対局料がもともと高いうえに、決勝トーナメント(11人)に入って勝ち上がるとさらに増額する。そして竜王保持者と挑戦者が争う七番勝負に出ると、勝者は3900万円(今期から700万円増額)、敗者は750万円を獲得できる。さらに保持者は、別に対局料として750万円を得る。つまり竜王保持者が勝てば、合計で4650万円を獲得できるのだ。
渡辺明竜王は、竜王を連続5期獲得している。その5年間で得た竜王戦での賞金・対局料は、およそ2億2千万円。他棋戦の分を含めると、もっと高額になるだろう。将棋連盟が発表した年間の賞金ランキングによると、渡辺は2007年が約8000万円で2位、2008年が6000万円で2位。なお両年とも、タイトル獲得数が多い羽生善治名人が1位になった。
野球やサッカーのようなプロスポーツの世界に比べると、将棋界の賞金水準は決して高くない。ただスポーツ選手と違って、棋士は現役の寿命が長い。年をとれば次第に実力は落ちていくが、中高年になっても現役続行は可能なのだ。私は今年で棋士生活が38年目。今では成績不良でランクが落ち、対局料収入は最盛期から半減した。それでも棋士を細く長く続けていられる。なお、棋士にも「定年」制度がある。現在59歳の私の場合、65歳まで現役を続けることができる。
将棋界では、竜王戦と名人戦が二大棋戦。ただ両者で決定的に違う点は、タイトルまでの道程だ。名人戦はA級・B級1組・B級2組・C級1組・C級2組と5クラスに分かれ、新人棋士はC級2組から一段ずつ上がって頂上をめざす。名人になるには、最短でも6年かかる。実力本位の制度とはいえ、ヒエラルキーの形状をなしている。竜王戦も1組から6組までランクがあるが、6組の新人棋士でも1位になれば決勝トーナメントに出場でき、さらに勝ち上がれば挑戦者になれる。つまり、わずか1年で竜王を獲得することも夢ではないのだ。新入社員がいきなり社長に昇進できるシステムの竜王戦は、まさに「と金ドリーム」が叶う棋戦といえよう。
藤井猛九段は以前に竜王を3期獲得し、30歳で東京・西荻窪に家を建てた。渡辺竜王も2年前、23歳の若さで西荻窪に家を建てた。訪ねた人の話では、どちらも豪邸だという。つまり西荻窪には、「竜王御殿」が2軒もあるわけだ。じつは、私も西荻窪に長く住んでいる。しかし高額賞金に縁がなかったので、いまだ賃貸マンション暮らし。これが勝負の世界の現実である。
次回は、私が弟子と対局した「師弟戦」の話。
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コメント
田丸さん、ブログ開設おめでとう御座います。文章上手いから読みやすいです。写真も、もっと掲載すると良いな~あ。今、11月24日宝島社から発売の羽生さんのムック本の取材しています。3万部の予定です。
投稿: 弦巻 勝 | 2009年10月13日 (火) 09時06分
はじめまして。
将棋の世界に興味はあるのですが、なかなか判らない部分が多い世界ですね。
田丸さんのブログを読んで、少しでも理解できたらいいなと思います。
楽しみにしています。
投稿: 穂高 | 2009年10月15日 (木) 19時16分