将棋棋士 田丸昇の と金 横歩き

2017年3月28日 (火)

将棋連盟の理事制度と理事選挙について

私がこのブログで書いた三浦弘行九段の「冤罪問題」については、多くのコメントが寄せられました。その中から、いくつか取り上げて私の見解と実情を述べます。

「将棋連盟の理事は相撲協会のように、理事全員が引退棋士で担うということはできないのでしょうか。現役棋士と役員の兼務は大変だと思います。引退棋士なら人生経験が豊富で、理事の仕事に専任できます」という内容のコメント(1月26日)は《こうめい》さん。

三浦九段の「冤罪問題」では、前常務会の当初の措置や以後の対応について、棋界の内外から批判が相次ぎ、結果的に谷川浩司(九段)会長をはじめ5人の理事が辞める事態となりました。そんな状況を踏まえて、現役棋士が理事を務めるのは大変ではないか、という外部の人たちの声があります。ただ相撲界では大半の力士が30代までに引退しますが、将棋界では大半の棋士が60歳ぐらいまで現役でいます。ですから単純な比較はできません。

過去50年の連盟理事の中で、引退棋士が理事を務めたのは加藤治郎名誉九段、高柳敏夫名誉九段、二上達也九段、米長邦雄永世棋聖、西村一義九段など、数人しかいません(理事在任中に引退した例を含む)。大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人、塚田正夫名誉十段、丸田祐三九段、大内延介九段、板谷進九段、勝浦修九段などの一流棋士たちは、現役棋士のかたわら理事を務めました。

私たち棋士はそうした歴史もあって、現役棋士が連盟理事を務めることを自然に受け止めています。しかし近年の理事の業務は、私が理事を務めた時期(1989年~1995年)に比べて、かなり繁忙になっているような気がします。理事と棋士の「二足の草鞋」を履くことがいかに大変かは、谷川会長時代の前常務会の理事たちの公式戦の成績(とくに順位戦)を見たとおりで、相当な負担がかかっていたと思わざるをえません。

約50年前には、丸田九段、広津久雄九段が公式戦を「公務休場」して理事の業務に専念したことがありました。棋士としての待遇をある程度補完すれば、そういう立場の理事がいてもいいと思います。外部の人を常勤の理事に迎える、常務理事(現在の定数は7人)のうち1人は引退棋士を当てる、といったことも検討されてほしいですが、重要な制度改定は総会での決議が必要なので簡単には実現しません。

2011年に将棋連盟が公益社団法人に認可されて以来、理事の選挙制度は少し変わりました。以前は通常総会の当日に理事選挙(2年に1回)が行われました。現行は総会の1ヵ月前に「予備選挙」を行って常務理事を選び、総会で拍手をもって承認される形式です。常務会が推薦した非常勤理事、外部理事、監事は予備選挙の日に「信任投票」が行われ、投票総数(不在者投票を含む)の過半数で承認されます。

常務理事の選挙は、定数(東京5人・関西2人)の連記制です。東西の将棋会館で投票が行われた後、投票用紙に書かれた立候補者の名前を1人ずつ読み上げ、ホワイトボードに「正」の字を書き足していきます。これらの作業は新四段たちが務めるのが恒例です。出席した棋士たちは、ホワイトボードに書かれた「正」の字の数を見て、「Aはダントツで1位」「Bはぎりぎり昇級」「Cは降級圏内」などと、順位戦の昇降級争いに見立てて予想します。そして東西の票数を合わせて当選者が決まります。

通常総会は例年、6月上旬に開かれます。しかし今年は、2月27日の臨時総会で3人の常務理事が解任されて理事の人数が減ったことによって、時期を早めて5月に開かれるようです。今年で改選となる常務理事の予備選挙も合わせて前倒しされます。立候補期間は4月10日・11日、予備選挙は4月27日と決まりました。

その予備選挙に向けて、水面下ではいろいろな動きがあります。大物棋士や意外な棋士の出馬も取り沙汰されています。なお、私こと田丸昇九段は出馬しません。新しい常務会を外側からサポートするような役目を果たしたいと思っています。

次回も、このブログへのコメントを取り上げます。

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2017 03 28 18 54 02 | | コメント (3) | トラックバック (0)

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